2026年秋、フランスでは各地で抗議デモが発生し、一部では暴動や略奪なども報道されています。
これからフランス留学を予定している方や、ご家族をフランスへ送り出す保護者の方の中には、「今、フランスに留学しても大丈夫なの?」「現地で危険な目に遭わない?」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、2026年11月現在のフランスの状況を整理し、留学生への影響や渡航時に気をつけたいことについて、フランス留学をサポートする立場から、また、ちょうど2026年10月にフランスに滞在していた留学カウンセラーという立場から解説したいと思います。
2026年、フランスで何が起きている?
フランスの歴史から知るデモやストライキとフランス人の関係
2026年秋のフランスでは、主に次のような抗議活動が報道されています。
- 高校生や学生による学校教育への抗議
- 生活費やエネルギー価格の高騰に対する不満
- 労働組合などによる労働条件の改善を求めるデモ
- 一部で発生した警察との衝突、放火、略奪、破壊行為
- 2027年4月に予定されているフランスの大統領選挙に向けての動き
今回の抗議活動では、まず高校生や学生による学校教育への不満が表面化しました。教員不足や学校施設の老朽化、クラスの過密化などを訴える動きが広がり、一部では学校の封鎖や警察との衝突、逮捕者が出る事態となりました。その後、生活費やエネルギー価格の高騰に対する政府への不満、労働条件の改善を求める動きなども重なり、抗議活動が各地に広がりました。フランスでは2027年4月に大統領選挙を控えていることもあり、今回の騒動はマクロン大統領への不満も大きく関係していたとも言われています。
こうした動きの中では、2018年に燃料税の引き上げをきっかけに始まった「黄色いベスト運動(Gilets jaunes)」を想起させる抗議活動も見られましたし、デモに便乗した一部の過激派(ブラック・ブロックなど)が放火や略奪、破壊行為を行ったことも問題となっています。
ここで大切なのは、デモそのものと、デモに乗じて行われる暴力や破壊行為は別のものだということです。
フランスでは、デモやストライキは市民が国や政府に対して自分たちの意見を表明する手段として、歴史的に深く根付いています。フランス革命の歴史を持つフランスでは、労働条件、物価、教育、年金制度など、社会的な問題が起こると、デモやストライキを通じて自分たちの主張を社会に訴えることが一般的です。そのため、フランスに住んでいると日常的にデモやストライキに遭遇することがあります。それ自体が必ずしも危険な行為というわけではありません。
ただし、デモが大規模になるほど、参加者以外の過激派が加わったり、一部で警察との衝突が起きたりする可能性もあります。そのため、大規模なデモが予定されている際には注意が必要なのです。
2027年大統領選挙を控えた政治的な背景
今回の抗議活動を理解するうえで、もうひとつ知っておきたいのが、2027年4月に予定されているフランス大統領選挙です。次回の大統領選挙は、2027年4月18日に第1回投票、5月2日に決選投票が予定されています。
マクロン大統領は憲法上、3期連続で大統領を務めることができないため、今回の選挙には出馬できません。つまり、マクロン政権にとっては任期最後の時期にあたります。
今回の抗議活動の背景には、教育環境や物価高、労働条件といった個別の問題だけでなく、長年のマクロン政権に対する国民の不満や、政府への不信感もあると報じられています。実際、2026年10月の大規模な抗議活動では、政府の対応やマクロン大統領の政治姿勢も批判の対象となりました。2027年の大統領選挙を前に、今回の騒動はフランス国内の政治的な対立や社会の分断を改めて浮き彫りにしています。
このように、今回のデモや抗議活動は、単なる一時的な社会問題ではなく、フランスの今後の政治や社会の方向性にも関わる動きとして注目されています。
フランス留学への影響は?
今回の抗議活動では、留学生の生活にもいくつか影響が出ました。
主なものは次の3つです。
- 対面授業の一時的な見合わせ、オンライン授業への切り替え
- メトロなど交通機関への影響
- 一部地域での夜間外出制限
① 対面授業からオンライン授業への変更
パリカトリック大学附属語学学校など一部の大学附属語学学校では、大学構内にバリケードが設置され、警察と学生の衝突が発生したこともありました。その影響で、対面授業を一時的に見合わせ、オンライン授業に切り替える措置が取られた学校もありました。
コロナ禍を経験したこともあり、学校側もオンライン授業への移行には比較的スムーズに対応できていたようです。一方、突然オンライン授業への変更を伝えられた生徒さんたちは、戸惑うこともあったと思います。その後、私たちが学校関係者から確認した範囲では、対面授業に戻っているようでした。
② メトロなど交通機関への影響
留学生にとって、比較的身近な影響があったのが交通機関です。デモが予定されているルート上のメトロ駅が事前に封鎖されたり、大規模なデモの日には主要駅が利用できなくなったりすることがありました。平日にもパリ市内の複数のメトロ駅が閉鎖され、通勤や通学に影響が出るケースがありました。
ただし、大規模なメトロ駅の封鎖が行われた日は土曜日だったこともあり、学校への通学に大きな影響が出なかった生徒さんも多かったようです。
ちなみに、パリでデモが行われる際、集合場所や行進ルートとしてよく使われるのが、バスティーユ広場(Place de la Bastille)とレピュブリック広場(Place de la République)です。
バスティーユ広場は1789年のフランス革命の始まりを象徴する場所。一方、レピュブリック広場にはフランス共和国の理念である「自由・平等・友愛」を象徴するマリアンヌ像が立っています。どちらもフランスの歴史や市民運動と深く結びついた場所であり、大規模なデモの集合場所として利用されることが多くあります。そのためこの周辺ではデモの開催に伴い、メトロ駅の閉鎖や道路規制が行われることもあります。大規模なデモが予定されている場合は、これらの広場や行進ルート周辺にはなるべく近づかないようにしましょう。
③ 夜間外出制限
抗議活動が激化した際には、パリの一部地域などで夜間の外出が制限される措置も取られました。ただし、これはフランス全土に一律で発令されたものではなく、対象地域や期間が限定された措置です。パリ市内の中でも限られたごく一部の中心地のみでの対応となりました。
留学先の都市や滞在地域によって状況は異なるため、現地の自治体や大使館からの情報を確認することが大切です。
留学生が気をつけるべきこと
では、フランスに留学中の学生は、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
① デモや集会が予定されている場所には近づかない
まず基本となるのは、デモや集会が予定されている場所に近づかないことです。特に大規模なデモでは、警察との衝突や交通規制が発生する可能性があります。
事前に外務省の「たびレジ」に登録しておくと、渡航先の安全情報や注意喚起をメールで受け取ることができます。
外務省の公式サイト:
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html
今回の抗議活動についても、在フランス日本国大使館から事前に注意喚起が発出されていました。デモの予定やルート変更などの情報を事前に知っておくことで、外出の予定を変更したり、危険な場所を避けたりすることができます。
② 群衆や警察が集まっている場所から離れる
デモが予定されている場所を避けていても、デモ隊が移動している途中に偶然遭遇してしまう可能性があります。そのような場合は、興味本位で近づいたり、写真や動画を撮影しようとしたりせず、速やかにその場から離れて安全な場所へ移動しましょう。
また、警察やデモ隊が集まっている場所では、周辺の状況にも注意してください。
③ 外務省や現地の情報をこまめに確認する
海外で生活するうえで、情報収集はとても大切です。外務省の「たびレジ」だけでなく、在フランス日本国大使館、現地のニュース、学校からの連絡なども確認する習慣をつけておきましょう。
交通機関については、RATPなどの公式サイトやアプリで運行状況を確認することもおすすめします。情報を事前に把握していれば、通学ルートを変更したり、外出を控えたりと、状況に合わせた行動ができます。
それでもフランス留学はできる?
今回の抗議活動や一部で発生した暴力行為を見て、フランス留学を不安に感じる方もいらっしゃると思います。
もちろん、フランスが常に安全だというわけではありませんし、今回のように大規模なデモや交通規制、突発的な衝突が発生する可能性もあります。一方で、今回の抗議活動がフランス全土の日常生活を一律に停止させているわけではありません。実際に多くの留学生は、学校やホームステイ先で通常の生活を送っています。私自身、2026年10月にフランスに滞在し、現地の様子を見てきました。フランスでは社会的な問題が起こるとデモやストライキによって市民が声を上げることがありますが、それもフランス社会の一面です。大切なのは、現地の状況を正しく知り、危険な場所には近づかず、必要な情報を得ながら行動することです。日本を含め、世界中どこにいても絶対に安全と言い切れる場所はありません。日本にも地震や台風がありますし、日常生活の中で予期せぬ事故に遭う可能性もあります。だからこそ、必要以上に怖がるのではなく、正しい情報を得たうえで、自分が納得できる判断をすることが大切だと私は考えています。
留学で身につくのは語学力だけではない
フランスには、語学を学ぶだけではなく、現地の人々の考え方や文化、社会の仕組みを肌で感じられる魅力があります。そして、今回のようなデモやストライキなど、日本で生活しているとなかなか遭遇しない状況に直面したとき、どのように情報を集め、状況を判断し、行動するのか。これも海外留学だからこそ得られる経験のひとつだと思います。現地のニュースや学校からの連絡を確認し、自分に必要な情報を取捨選択する。安全を考えて予定を変更したり、交通手段を調べ直したり、時には自分で解決策を考えたりする。こうした日々の経験を通じて、語学力だけでなく、
- 必要な情報を自分で集める「情報収集力」
- 状況を把握し、安全な行動を選択する「危機管理能力」
- 予期せぬ変化にも対応する「柔軟性」
- 問題に直面したときに解決策を見つける「問題解決能力」
といった、これからの人生や就職活動、キャリアアップにも役立つさまざまな力が自然と身についていきます。
もちろん、危険な状況に遭遇することを勧めているわけではありません。大切なのは、正しい情報を得て、自分の身を守るために考え、行動できるようになることです。留学は、教室の中だけで完結するものではありません。現地での生活そのものが学びであり、日本にいるだけではなかなか得られない経験が、自分自身を成長させてくれます。フランス留学を通じて、語学力はもちろん、世界の中で自分で考え、判断し、行動できる力も身につけてほしいと思います。
私たちアフィニティ留学も、現地の学校やホームステイ会社と連携しながら、渡航前から滞在中まで、皆さんが安心して留学生活を送れるようサポートしていきます。フランス留学について不安なことや気になることがあれば、ぜひお気軽にアフィニティ留学までお問い合わせくださいね。
